私好みの新刊 202511

『てんぐさ』 田中次郎・青木優和/文 畑中富美子/絵 仮説社   

 「海のナンジャコリャーズ」として「われから」「わかめ」「うに」

に続く四冊目。今までのシリーズも海中生き物の世界がよくとらえられ

ていたが、この『てんぐさ』は藻類の不思議な世界がたくさん描かれて

いる。「てんぐさ」は「ところてん」をつくる海藻ぐらいの認識はあっ

たが、これほどまで奥深いとは・・。

 本書はかな書きの絵本であるが、初めて海藻の世界を知る大人でもず

いぶんと参考になる。まず,この本の扉をあけると、本文の前に「海藻の

3大グループ」の説明がある。扉にある解説によると、海藻には、緑藻、

褐藻、紅藻があり、じつに23種類もの海藻があるとのことにまず驚かさ

れる。本文で最初に出てくるのは伊豆半島の海岸。陸地側に紅い海藻が

一面に干されている。この紅い海藻はてんぐさの仲間で「マクサ」という

もじゃもじゃの海藻だ。同時にてんぐさの仲間がいくつも描かれている。

どれも紅色をしている。ページをくると、地上の植物と海中の藻類との

季節ごとの比較描写がされている。海中植物は年中色の変化はなく、紅い

てんぐさもたくさん描かれている。ここで「どうして うみのなかは 

あかや ちゃいろの かいそう ばかりなんだろう」と疑問をいだく場

面が出る。ぺーじをくると、その答えが描かれている。

浅い海では太陽光のうち赤色や黄色も届くが、少し深くなると緑色、

青色、濃紺色の光しか届かないからだという。以後、ページを追うごとに

てんぐさの生態についてくわしく描かれている。伊豆沖で採集されたてん

ぐさは、長野県の山あいでところてんに作られていく。その過程もくわ

しく描かれている。最後に「寒天の化学」「紅藻の遺伝のしくみ」など

くわしい解説がある。

ふだんなにげなく食べているかんてんにもこんなに深いわけが潜

んでいるのかと驚かされる一冊である。  20258月 1,800円 

 

『海は』 吉野雄輔/文・写真 たくさんのふしぎ6月号 福音館書店

 著者は海の魅力を多数発信してきたカメラマンである。「50年近く、海へ

通い、潜り、感動している僕の実感です。」(付録・ふしぎ新聞)で著者が書く

ように、この本では海のさまざまな場面を見せている。著者の望むように

「少しでも海の魅力が感じられる本」(著者弁)になっているか。

 まずは「海はひろい」。広大な青い海原にポツンと見える珊瑚礁ミクロネ

シアの海が出てくる。個々に見える海も環礁のなかだとか。海は広い。続いて

青い海が出る。まるでネックレスのようにとりまく環礁がさえる。珊瑚礁が

ゆっくりと沈むみつつある堡礁ではいくつかの人工物も見える。次は「海は

あおい」。環礁内の静かな海を映し出している。海底のサンゴもよく見える。

次は一変して「海は近い」。こんどはラッコが浮かび、それを見る人々がいる。

海は人の生活圏にも近い。次はまた一変して海の中、「海は大きい」。著者が

何度も潜っていると大きなイトマキエイがでんぐりん返りで歓迎するとか。

海は広い、一変すると ははげしい」。珊瑚礁は外洋の激しい波をさえぎる

役目もある。また、海底の温泉が出る所があり地球の鼓動が聞こえるとか。海

の激しい一面が見える。次はまた一変して「海はかわいい」。海はまたかわい

い側面も見せる。氷の上で寝転がっているタテゴトアザラシの赤ちゃん。ダイ

バーと遊んだりするイルカ。どれも大海原のかわいい動物たち。カマスの大群

を映し出した「海はぎっしり」。まさに魚の大群だ。次は「海はおかしい」。

珊瑚などに棲むあざゆかな色とりどりの魚。海中なのにこんなはでな色は何の

ため、どうしてできるのか不思議だ。まだまだタイトルは続く。

珊瑚礁の青い海「海は美しい」でフィナーレをかざっている。

                         20256月 736   

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